2019.7.3

(過去記事)知っておきたい税金の話24 ふるさと納税

※この記事は、平成28年に「北近畿経済新聞」に掲載されたものです。現在の状況とは異なりますので、ご留意ください。

 

~個人版ふるさと納税~
個人が自由に地方自治体を選んで寄付をすると、寄付金のほぼ全額が減税される「ふるさと納税」が増加しています。総務省は平成27年度に全国の自治体が受け取った寄付額は前年度の4.3倍の1,653億円、寄付件数も同3.8倍の726万件と発表しました。また、寄付額の4割~5割が返礼品の調達費や発送費に使われていることもわかりました。

今回ふるさと納税が増加した理由として、1点目は、多くの自治体が寄付の返礼品を贈っており、その品物が充実し2,000円の負担で自分の気に入った返礼品がもらえたこと。2点目は、平成27年度から減税対象になる寄付金の上限額が約2倍に拡大され、気に入った返礼品をもらいながら所得税や住民税の節税額が増えたこと。特に高所得者は上限額が高く、多額の返礼品をもらいながら節税にもなる仕組みになっていること。3点目として、年間5団体までのふるさと納税は、確定申告をしなくても寄付金控除が受けられる「ふるさと納税ワンストップ制度」が始まり、手続きが簡単になったことなどが考えられます。

ふるさと納税の当初の趣旨は、地方で生まれ育ち都会に出てきた人々が、自分を育て支え一人前にしてくれた「ふるさと」に、税金を通して恩返しをするという想いのもと始まった制度でした。しかし、返礼品を受けるのが当たり前となった現行の制度では、寄付は見返りを求めないという本来の寄付のあり方をゆがめてしまうとの批判もあります。
そうした中、今回の熊本地震では、ふるさと納税が被災地支援の手段として注目されています。熊本地震では、返礼品がなくても被災自治体に多くのふるさと納税が集まっています。また、被災自治体では寄付を受け入れることによる事務作業が追い付かないこともあり、他の有志の自治体が被災自治体のために代わって寄付を受け付ける「代理受付」の取り組みも広がりつつあるようです。

 

~企業版ふるさと納税~
平成28年度税制改正により、企業版のふるさと納税(地方創生応援税制)が創設されることになりました。
企業版ふるさと納税は、地方公共団体が地方創生のため効果の高い事業を進める際に、事業の趣旨に賛同する企業が寄付を行うことにより、官民挙げてその事業を推進し、地方創生に取り組む地方を応援する目的で創設されました。
認定地方公共団体に一定の寄付をした企業は、税額控除を適用して税負担が軽減されることになります。例えば、企業が地方公共団体に100万円の寄付をした場合、現行の制度では寄付額の約3割(約30万円)の軽減効果があります。企業版ふるさと納税では、新たに寄付額の3割(30万円)が税額控除され、最大約6割(60万円)の軽減効果があります。1回当たり10万円以上の寄付が対象になります。
ただし、本社がある地方公共団体への寄付はふるさと納税の対象にならず、個人版ふるさと納税とは異なり「返礼品」が企業版には認められていないなど、いくつかの留意点もあります。