2019.6.19

(過去記事)知っておきたい税金の話14 上場株式等を売却した場合の確定申告

※この記事は、平成25年に「北近畿経済新聞」に掲載されたものです。現在の状況とは異なりますので、ご留意ください。

 

個人が上場株式等を売却した場合の確定申告は少し複雑です。なぜなら①申告をしなければならない場合②申告しなくてもよい場合③申告の義務はないが申告すれば税金が軽減できる場合、損失を翌年以降に繰り越しできる場合などがあるからです。更に、平成21年からは上場株式等の配当と売却損失との相殺(損益通算)も認められることになり益々複雑になっています。

 

【1】上場株式等を売却したときの税金
株式等を売却した場合の税金計算は、他の所得とは区分して株式売却利益単独で税金を計算する「申告分離課税」となっています。従って、他の所得が多い人も少ない人も、株式売却利益に対する税金は同額になります。
(1)上場株式等の売却利益にかかる税金は、平成15年~平成25年の間は10%(所得税7%・住民税3%)ですが、平成26年からは20%(所得税15%・住民税5%)になります。ただし、平成25年から「復興特別所得税」がかかりますのでそれを加えますと平成25年は10.147%、平成26年以降は20.315%の税率になります。
(2)上場株式等の売却損失で、同一年中の他の株式売却利益と相殺してもなお損失が残る場合は、確定申告をすることによりその損失を翌年以降3年間繰り越すことができます。つまり翌年以降の株式売却利益と相殺できます。
(3)上場株式等の売却損失(前3年以内の繰越損失を含む)は、申告分離課税により申告した上場株式等の配当等と損益通算ができます。ただし、配当控除を受ける場合には、申告分離課税ではなく総合課税を選択する必要がありますので、その場合には損益通算はできないことになります。

 

【2】具体例
例えば、平成24年中の上場株式売却によりA証券特定口座で180万円の損失、B証券特定口座(源泉徴収するを選択)で100万円の利益、上場株式配当が30万円あったとします。この場合、申告の義務はありませんのでそのままでもよろしいが、B証券で源泉徴収された所得税7万円と2.1万円を余分に払うことになります。そこで以下のように確定申告をすることで税金は軽減されます。
(ステップ1)まず、A証券の180万円の損失とB証券の100万円の利益を相殺し、80万円の損失が残ります。B証券100万円の利益に対する源泉所得税7万円は還付若しくは軽減になります。
(ステップ2)次に、残った80万円の損失と配当30万円を相殺して、なお残りの損失50万円を翌年以降に繰り越す申告をします。配当の源泉所得税2.1万円も還付若しくは軽減されます。
(ステップ3)翌年に繰り越された50万円の損失は、確定申告をすることにより平成25年の株式売却利益や上場株式等の配当と相殺可能です。
ただし、これはほんの一例ですので実際にはいろいろなケースがあります。場合によっては、申告しなくてもよい場合に申告することで所得が増加して他に影響することも考えられます。その都度自分で有利不利を検討しながら申告する・しないの判断をすることになります。