2019.6.7

(過去記事)知っておきたい税金の話6 贈与税の配偶者控除

※この記事は、平成24年に「北近畿経済新聞」に掲載されたものです。現在の状況とは異なりますので、ご留意ください。

 

たとえ夫婦の間でも、贈与があった場合には贈与税が課されるのが原則です。しかし、居住用の不動産又は居住用の不動産を取得するための金銭の贈与については、一定の要件を満たすことにより、2,000万円までの夫婦間贈与について贈与税が課されない「贈与税の配偶者控除」の制度があります。

 

【1】 適用を受けるための要件
(1) 夫婦の婚姻期間(戸籍に入っている期間)が20年を過ぎた後に贈与が行われること。ただしこの制度は、同じ配偶者からは一生に1回しか受けられませんので、時期を考え効果的に行ってください。
(2) 配偶者から贈与を受けた財産は、自分が住むための居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭であること。一般的には、金銭より居住用不動産(宅地や建物)をもらった方が有利になります。ただし、宅地や建物の名義変更をしますので、登録免許税や不動産取得税などの諸経費がかかります。
(3) 贈与を受けた配偶者は、贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与により取得した居住用不動産又は金銭により取得した居住用不動産に居住し、その後も引き続き居住する見込みであること。
(4) 贈与税の配偶者控除を受ける旨の贈与税の申告書を税務署に提出すること。

 

【2】 建物や宅地の評価方法
金銭の贈与であれば贈与金額は簡単明瞭ですが、宅地や建物の場合は、次のように贈与金額を決めることになります。
(1) 建物
毎年5月頃に市区町村から送られてくる固定資産税課税明細書に記載されている「評価額」の金額によります。これと似たものに「課税標準額」がありますので、見間違わないよう注意してください。
(2) 宅地
宅地の評価は2つの方法があります。宅地のある場所によりその評価方法が異なります。
① 路線化方式
毎年7月に国税庁のHPにその年の路線価図が発表されます。路線価図には道路ごとに、その道路に接する宅地1㎡当たりの標準価額が記載されています。評価する宅地の標準価額に一定の調整を加えて、その金額に宅地の面積をかけて求めます。
② 倍率方式
固定資産税評価額に、地域ごとに定められている倍率をかけて求めます。この倍率は、国税庁のHPに載っています。上記の路線価図にない地域はこの倍率方式により求めます。

このようにして求めた自宅の建物や宅地の金額が贈与の金額になります。

 

【3】 相続税対策として
相続税には「相続開始前3年以内の贈与財産の加算」という制度があります。この制度は、被相続人からの生前贈与のうち相続開始前3年以内のものは、相続税の課税価格に加算して相続税を計算するというものです。つまり、駆け込みで贈与して財産を減らそうとしてもだめですよということです。しかし、この「贈与税の配偶者控除」を受けた部分(最高2,000万円)については、相続開始前3年以内の贈与であっても、相続税の課税価格に加算はされませんので、直前の相続税対策としても有効になります。