2019.6.17

(過去記事)知っておきたい税金の話12 現金預金を贈与する場合の留意点

※この記事は、平成24年に「北近畿経済新聞」に掲載されたものです。現在の状況とは異なりますので、ご留意ください。

 

相続税の負担を軽くすることを目的として、おじいちゃんやおばあちゃんが子供や孫の名義で預金をしていることがよくあります。この場合、贈与が適法に成立してれば問題はありませんが、仮に子供や孫に贈与したことを知らせずに自分で子供や孫名義の預金を管理保管しているという場合は、子供や孫の名義を借りただけの「名義預金」と言われます。その結果、贈与したつもりがその贈与は認められず、何年もかけて多額の預金を移動したにも関わらず、1円も相続税対策になっていなかったということはよくあります。

民法では「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することによって、その効力を生ずる」としており、これを平たく言いますと、「この財産をタダであげましょう」「もらいましょう」とお互いの合意によって成立する契約で、財産をもらった人はその財産を自由に消費や使用などができる状況になることを言います。ですから、子供や孫が贈与を受けた事実を知らなかったり、贈与を受けた預金を自由に使えなければ、法律的には贈与があったとは認めてもらえないのです。そこで、現金や預貯金の贈与を確実なものにするために、次のような手続きをしておくことが大切になります。

 

【1】贈与契約書を作成する
贈与は口頭による場合でも成立しますので、必ずしも贈与契約書が必要という訳ではありませんが、贈与の内容(贈与日、贈与者、受贈者、贈与財産など)を書面にしておくことは、税務上はもちろんのことその他の面からも大切です。
また、未成年者に贈与する場合は、未成年者が贈与の事実を知らなくても親権者が同意すれば贈与契約は成立しますので、未成年者と連名で親権者が贈与契約を結ぶことが必要です。

 

【2】贈与内容の履行方法
現金預金を贈与する場合には、現金で直接渡すよりも贈与する人の預金口座から、もらう人の預金口座に振込む方法で実行するのが望ましいでしょう。預金移動の事実が通帳に残り、贈与した証拠にもなります。

 

【3】通帳の管理等
贈与により振込みを受けた受贈者の通帳やその印鑑、証書などは、もらった人が保管や管理をすることが必要で、いつでもその預金をもらった人が使える状況にして下さい。また、その通帳の届出印は贈与者のものとは別のものにしておく方が誤解されないと思います。

 

【4】贈与税の申告納付
暦年贈与の場合、贈与金額が110万円を超えるときは贈与税がかかりますので、翌年の2月1日から3月15日までに贈与税の申告と納付をするようにして下さい。ただ、贈与税の申告納付をしただけで上記の内容が満たされていない場合には、贈与が成立していないと考えられますのでその点はご留意下さい。