2019.6.12

(過去記事)知っておきたい税金の話9 相続税対策としての贈与③

※この記事は、平成24年に「北近畿経済新聞」に掲載されたものです。現在の状況とは異なりますので、ご留意ください。

 

相続税の節税を考える上で、暦年贈与を行うことによって相続時の財産をできるだけ少なくして行くことが効果的ですが、一つ注意しなければならないことがあります。それは、相続開始前3年以内に贈与した財産は相続財産に加算される場合があるということです。つまり相続の発生が近いことを予期して、相続財産を減らすためにあわてて贈与しても、その贈与が相続開始前3年以内に行われたものであれば、相続税の節税対策としてはあまり効果のない結果になる場合があります。ただ、相続開始前3年以内に行われたすべての贈与が相続財産に加算される訳ではありませんので、そのあたりをご説明しましょう。

 

【1】「相続開始前3年以内の贈与」が相続財産に加算される場合
(1) 「相続財産に加算される贈与財産」は、「相続又は遺贈により財産を取得した人」が「相続開始前3年以内」に「被相続人から贈与を受けた財産」となります。例えば、父が亡くなってその相続人である妻、長男、長女の3人で財産を相続した場合、父が亡くなった日からさかのぼって3年前の日までの3年間に、父がその相続人3人の誰かに贈与により財産を渡していても、その財産は父の相続財産に加えて相続税を計算することになりますので、父の財産が減ったことにはなりません。その贈与により贈与税を払っている場合は、相続税額を限度に控除できます。
(2) この場合相続財産に加算される財産の価額は、その財産の「相続時の価額」ではなく、「贈与時の価額」になります。例えば、贈与した時に100万円の有価証券が、相続時に200万円に値上がりしていても、贈与時の100万円で相続財産に加算します。このように贈与した財産が値上がりした場合のみ、相続財産に加算されたとしても節税効果はあると言えます。逆に、相続時に50万円と値下がりしていても贈与時の100万円で加算されますので、贈与はしない方が良かったことになります。

 

【2】相続財産に加算されない贈与の方法
(1) 「被相続人からの3年以内の贈与財産」が相続財産に加算されるのは、「その被相続人から相続又は遺贈で財産を取得した相続人等」に限られますので、「相続財産を取得しない人に対する贈与」は加算の対象になりません。例えば上記の例で言いますと、相続人でない長男や長女の配偶者やその子供(父から見れば孫)などに3年以内の贈与があっても、それは相続財産に加算されません。ただし、そのような人でも遺言で財産をもらったり、死亡保険金を受け取ったりすると、加算対象者になりますのでご留意ください。
(2) 配偶者への居住用財産の贈与で「贈与税の配偶者控除」(このシリーズの第6回に内容を掲載)を受けた部分は、それが相続開始前3年以内の贈与であっても相続財産に加算されないことになっていますので、相続直前の節税対策としても有効です。