2019.6.10

(過去記事)知っておきたい税金の話7 相続税対策としての贈与①

※この記事は、平成24年に「北近畿経済新聞」に掲載されたものです。現在の状況とは異なりますので、ご留意ください。

 

近年、贈与を相続税の節税に活用するケースが増えているようです。国税庁の資料によりますと、平成23年分の暦年課税による贈与税の申告をした人で、申告納税額のあるものは27.1万人で前年より3.1万人の増加、申告納税額は1,228億円で前年より119億円の増加となっています。また、この贈与税額は過去10年で最高となっており、単純に人数で割りますと一人当たりの贈与税額は約45.3万円となります。
この背景には政府が相続税の課税を強化しようとする方針を崩していないためと思われます。今から1年余り前の平成23年度税制改正の当初案には、相続税の基礎控除の引下げや税率構造の見直し、死亡保険金の非課税限度額の引下げなど、相続税課税強化の改正案が盛り込まれていたことは、よくご承知のことと思います。今国会において上記内容はまたも政府原案から削除されてしまいましたが、平成25年度税制改正で検討される可能性は高いと言えます。
贈与税の課税方法として、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2方法があります。今回は、「暦年課税」による贈与税の計算方法についてご説明し、次回に暦年課税を利用した具体的な相続税対策をご説明しましょう。

 

■暦年課税の計算方法
贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計金額をもとにして計算します。そして贈与税は財産をもらった人が、翌年の2月1日から3月15日までの間に税務署に申告書を提出して贈与税を納めます。計算方法は次のようになります(贈与税の配偶者控除は除いています)。
(1年間に贈与を受けた財産の価格-基礎控除110万円)×税率-控除額=贈与税額
暦年課税の贈与税は累進税率で、贈与を受けた財産の価格が増えるに従って税率が高くなっていきますので、次の速算表によって計算すると便利です。

具体例で説明しますと、例えば1年間に父から200万円、母から150万円、祖父から100万円、祖母から50万円もらった場合。(200万円+150万円+100万円+50万円)-110万円=390万円 この390万円を速算表に当てはめますと、390万円×20%-25万円=53万円となり、贈与税額は53万円と計算します。
なお、贈与税は個人が個人から贈与により財産をもらった場合にかかりますが、個人が法人から財産をもらえば贈与税ではなく所得税がかかることになりますのでご留意ください。